さっきの落下地点に戻る。
壁際からピーピー音がするのを確認して、無事を祈りつつ建物に入る。今日は研修中だったのを思い出す。「ほい、ほないこかー。」と先輩ぶる。
後ろから教え見守りつつ、スマホを触る。
すずめ 雛 巣から落ちた
すずめ 雛 エサ
すずめ 雛 保護
すると「簡易巣」という言葉を見つけた。
簡易巣に夢中になりすぎて疎かにならないよう気を付けながら言葉を放つ。
「ここで段取り確認しないとトラブるよ~」
まさか、簡易巣に負けてるとは思うまい。
ほな、復習しつつ休憩しよか!という便利な言葉をその場に置いて、また落下地点に。
ゴミ箱から漁ってきた手頃なモノにA4の紙を敷き詰め、彷徨く。ピーピー確認。音の鳴る方に近づきながら、モト冬樹のことを思い出す。いや、これもあれもセーフだろ。
すずめはバカだな、まだ動いてねぇのか。
少し心配になった。Googleによると親が鳴き声を頼りに見つけてそこで餌を食べて育ってのやつ、天敵に襲われる、親に捨てられる、ふつうにしぬの4パターンぐらいらしい。
すずめはバカだな、見つけろ見つかれ。
カラスも、ネコも、VOXYも全部いる場所からせめてVOXYだけでもと思い、簡易巣に移す。嘴が黄色いことに気づいて、チキンじゃないことを再確認。さっきの画像と同じ。
少し離れた場所でタバコを吸いながら、
見つかれと念じる。
少し気づく。
巣の中でピーピー騒いでも、誰かに見つからなければしぬし、俺もそんなに変わらない。ちょっと強めに念じる。
親っぽいすずめが落下地点付近に現れる。
いままでフィクションの中のチュンチュン…すら聞き流してきたが鳴き声にはパターンがあることを知る。
これは会話してるっぽい。
ただ「駅ついてるよ」「マジで」「どこいる?」「もうつく~」「どこ~」「待って~」みたいなクソLINE感がする。
すずめはバカだな、何時何分に何番出口のどこにどの色の服を着て立ってるのかを報告しないクソバカ無駄LINEみたいなことしやがって。最速で辿り着け。
「わからんから帰るわ~」
……嘘やろ?嘘みたいなLINEがきたぞ。
そして、本当にどっかいったぞ。
「え、待って待って?笑」
「もうついたよ?」
「(可愛いスタンプ)」
「いま、北改札口ついたとこ~!」
「どこ~?」
バカだな。
既読無視からの帰宅はマジでバカだな。
雛はスタンプ連打してるぞ。おい。
ピーピーいってんじゃねぇか。
フィルターギリになったタバコをけす。
そんなことは忘れ、教える。
ぜんぶ終わって帰る時間になった。
タバコを2~3本吸って空を見てたけど
なにも変化はなかった。
つぎのつぎのひ。
あさ。傘をさして落下地点に。
そこには何もなかった。
ひる。なんとなくタバコを吸いに外へ。
みずたまりでしんでる。
「すずめはバカだな」
ファミチキを握ろうと思い、
この話はなんとなく終わった。
おわり
タナカフクロウ
タナカフクロウの巣
タナカフクロウの巣です。
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