眼鏡（めがね、メガネ）とは、目の屈折異常を補正したり、目を保護したり、あるいは着飾ったりするために、目の周辺に装着する器具。目にかけるもの。

Wikipediaより。

辞典ではなく、さくっとwikiって、

これをいまから買いにいくのか、と思う。

とても個人的な悩みだが、この夏の免許の更新に行きたくない。めんどくさいから。

引っ越しして都道府県が変わったので、門真やら光明池といった馴染みの免許センターからよくわからない免許センターに行くことになってしまった。いや、馴染みの免許センターってなんやねん。免許センターが体に馴染んだこと１回もないわ。

これでもうだるいのに、だるい連鎖は続く。

「いまは大丈夫ですけど、これ以上視力が落ちると免許の更新の時とかひっかかりますねー。とりあえずそんな感じです。」

これは健康診断の時に言われた女医の言葉。

これと、紺のカーディガンを羽織ってて可愛いな、腕細いな、ってことしか覚えてない。

いま考えると、文字が見えづらい、ゾンビをヘッドショットする精度が年々落ちてきている、スマホさわりすぎ、目が悪い気がする、といった気づきは日々あった。

これが去年の冬。だいぶ先延ばした。

こうなったら行くぞ！行くんだオレは！

もうなんとなくメガネを買うぞ！

この気持ちのまま店に入ると、メガネがたくさん置いてあって少し笑った。

よく考えるとオレはメガネについてよく考えたことがなかった、とホントによく考えた。メガネなんか気にしたことがない。

「おい、メガネ」

心でモブを呼ぶとき、こう思うがこの思考がどれくらいの人数を敵に回すのかすら考えたことがない。そんなヤツがメガネになる。

フレームを探す。

「いや、オカンそっくりやがな！」

「うわ！コイツ頭ええけど、人を騙しまくる悪徳インテリみたいな顔しとるぞ！」

「あ～。諭す系ツッコミにいそう。」

「いちばんおもんない色」

「さっきのやつ！千原ジュニア版ミナミの帝王みたときのアレや！か、DOTAMAみたい！ベラベラ感えぐい！銀縁メガネあかんわ！」

「似合ってもボケてもない。ダサい狭間。」

「爆弾つくっとるなぁ～。」

「外せ外せ！ブスが出たぞ、ブスが！」

鏡の前、ミュートで叫ぶ。

おもろなってきた。

順番が来たので変な器具を装着。

もとけひ、さつこり、たなふく

暗号解読感。まぁまぁわからず

古代遺跡中盤で立ち往生。

わからん。クソアンチャーテッド。

視力検査の感じが思ってたのと違うので、終始戸惑いながらぼそぼそつぶやく。

メガネかけてるやつはもうちょいはやく教えてくれ。へんなも、じよむん、だよつて。

さっき選んだいちばん無難そうなメガネを渡すと30分後に出来上がると言われた。

ここで閃く。

「メガネケースや！」

2~300m先にある小綺麗な雑貨屋に入り

フクロウのメガネケースを探しにいく。めちゃくちゃドンピシャのやつがあったので、ちょっとだけ笑った。そういうこと。

もうこれは素晴らしいメガネライフが待ってる気がしてウキウキした。

2分で買い物を終わらせてメガネケース片手にメガネを取りに行く。

「では、つけた感じも大丈夫ですかね？」

「はい」

「受け取りのサインお願いします。」

「はい」

「あと、メガネケースをお選びください。」

「はい？？？」

「おすきなものをどうぞ」

そうか。あれか。

そりゃそうだ、ついてくるのか。

確かに、なるほどな、刀と鞘はセットや。

刀だけ売らんもんな。

るろうに剣心で鞘ないヤツおらんわ。

鬼滅の刃でも鞘ないヤツおらんのちゃう？

Ghost of Tsushimaも鞘ないのおらんやろ？

しらんけど。

だいたい刀と鞘はセット！

メガネとメガネケースもおなじ！

なんでその発想に至らんかったんや。

これは恥ずかしい。これは恥ずかしいぞ。

だいたいセット。世の中はだいたいセット。

「じゃあ俺、ビックマックで～。」

で、単品のビックマック買って家に来るようなツレがいたらそいつキライ。

だいたいわかれ、タナカ。

「あ、じゃあこの黒いので。」

こうして、刀1鞘2のへっぽこ侍誕生。

左でも右でも刀を収納出来るという能力一本でメガネ剣術界を渡り歩く驚異の剣士。

もうメガネの事なんてどうでもよくなった。

臼臼杵。筆箱箱。鍋蓋蓋。

くよくよとしょうもないことを考えながら歩いているといつもより赤信号の赤が強い気がした。手元にはメガネケースが2個あるのもハッキリわかった。

たなかふくろう👓

2020.07